Theodra

本、映画、香水、歌、旅。思い付いたことを徒然に。

黒い女(ひと)

マダム・マールはピアノの名手だった。 ヘンリー・ジェイムズの小説「The Portrait of a Lady」と同名の映画では、彼女がシューベルトの即興曲(op90−4)を弾いているところに、主人公のイザベルが登場する。 16分音符で一気に駆け下りる華やかな出だしだが…

水色

淡い水色、ペールブルーの色の洋服が目に留まる。 水色には慎ましさと、中性的な未成熟さが同居しており、エレガント、クラシカル、という分類をひらりとかわす。 カテゴライズされることを拒む、何かが潜んでいる。 一人でも臆せずに「Non」と言える強さが…

extra gavance

とても綺麗な香水瓶だった。個性的、と言うべきかもしれない。 細っそりした三角柱の磨りガラスの瓶に、givenchy extra gavance の文字が踊る。 金色のキャップの中央には鳥の羽が埋め込まれている。黒い斑が入った赤い羽根。真中は紫。 ジャスミンと白檀の…

LALIQUE

人はガラスを見る事ができるのだろうか? 何時かの真夏の昼間、何とは無しにラリック展に行った。 現代の生活ではお目にかかれないセンターピースやカーマスコット。ミュゲの香水瓶。 乳白色、もしくは透明なガラスの作品の数々。 目を凝らして見ても、何か…

ラヴェンナ

モザイク画が見てみたくて、ラヴェンナに行った事があった。 広場と大通りが一つだけの、小さな街。 ホテルに荷物を置き、ガラ・プラキディア廟を探しに出たが、なかなか辿り着けない。 「Mi scusi madam. Dove il Mausoleo di Galla Placidia?」(ガラ・プ…

マリー・ローランサン

曖昧な雰囲気の絵、がこれから書く内容に合っているように思い、ローランサンの絵を久しぶりに見た。 ピンク、ブルー、グレー、黒。 憂鬱な暗さが、色調の甘さに溶け合う。 ワットーの「シテール島の船出」にも同じ気配が漂っていた。 透明な快楽と憂鬱な気…

シェルタリング・スカイ

ポール・ボウルズの小説「The Sheltering Sky」の中で、touristとtravelerの違いについて主人公の二人が会話を交わす場面があった。 どう、違うのだ、という問い掛けに、 「ツーリストは元の場所に戻れるけれど、トラベラーは戻れない。」 と答える。 ベルナ…