マリー・ローランサン
曖昧な雰囲気の絵、がこれから書く内容に合っているように思い、ローランサンの絵を久しぶりに見た。
ピンク、ブルー、グレー、黒。
憂鬱な暗さが、色調の甘さに溶け合う。
ワットーの「シテール島の船出」にも同じ気配が漂っていた。
透明な快楽と憂鬱な気配。
モーツァルトの音楽にも通じる、この雰囲気。
「Ti vo’la fronte incoronar di rose」
(あなたに薔薇の花冠を被せたいわ)
とは、フィガロの結婚のスザンナのアリアの一節。
花冠を掛ける事には性的な意味が隠されている。
木の枝に花輪を掛け、誤って水に落ちたオフィーリア。
オフィーリアは罰を受け死んだが、モーツァルトのロココの饗宴は、現代まで続いている。
快楽の上澄みは、繊細で、一瞬で消えてしまう。
一瞬の煌めきを掬う事ができた人達。
彼らはシテール島に船出をし、そこで永遠に生き続ける。