とても綺麗な香水瓶だった。個性的、と言うべきかもしれない。
細っそりした三角柱の磨りガラスの瓶に、givenchy extra gavance の文字が踊る。
金色のキャップの中央には鳥の羽が埋め込まれている。黒い斑が入った赤い羽根。真中は紫。
ジャスミンと白檀の香りの持つ、翳り、寂しさのような佇まいに思わずはっとした事も何度かあった。
香りに相応しい場所が思い付かず、あまり使わなかった。今、手元には無い。
大分昔の事なのに、細かな事まで思い出せる。かなり気に入っていたのだと思う。
記憶の中だけに存在する、近寄り難いけれど、魅かれていた人。
この思いは、成就しなかった恋に似ている。